ディスカバリーで違反行為があった場合、制裁がおこなわれることは珍しくありません。しかし、違反行為が意図的かつ不誠実な行為と判断されると、最悪、その違反行為が原因で自動的に訴訟に負けてしまうという事態にもなりかねません。
ケース:Performance Chemical Co. v. True Chemical Solutions, LLC, Case No. W-21-CV-00222-ADA (W.D. Tex. May 20, 2021)
このケースでは、被告が裁判の数週間前まで証拠を隠していたことが問題になりました。
このケースにおけるディスカバリー違反が他の一般的な違反と異なる点は、以下の点において当事者間で対立がなく、違反行為があったことがほぼ間違い無い状況にあったことです。
- (a) 被告は重要な証拠を隠した
- (b) 被告は通常の開示実務だけでなく、検査のためにフラックトレーラーを提供するという裁判所からの特定の命令を無視し、従わなかった
- (c) 被告は証拠の保全を怠り、自動化の証拠を隠すという特定の目的のためにトレーラーを解体して証拠を破壊した可能性がある
- (d) 被告は、自社の文書や電子メールを十分に検討することなく、非侵害を主張する宣言的判決訴訟(declaratory judgment action)を提起
- (e) 被告の従業員は、自動化について直接質問された際に宣誓したにもかかわらず嘘をついた
このような事実を評価した結果、裁判所は、被告が意図的かつ悪意を持って行動したと結論付けざるを得ない状況にありました。
この状況を重く見た裁判官は、めったに出ないDeath Penalty制裁を行いました。
死刑的(Death Penalty)制裁は、裁判所がディスカバリーの濫用を理由に当事者の答弁書を取り消すことで、事実上、反論できなくなります。そうなることで、もう一方の当事者の主張が受け入れられることになるので、死刑的制裁を受けた当事者が自動的に敗訴するという形になります。
ディスカバリーはアメリカの裁判において重要なシステムです。これを軽んじて違反行為をし続けると重い制裁を受ける可能性もあるので、十分な注意が必要です。
参考文献:Concealing of “Vital Evidence” until Weeks before Trial Justifies Death Penalty Sanctions