CAFCが故意の侵害に対する別基準は存在しないことを明確化

SRI Int’l, Inc. v. Cisco Sys., Inc., No. 2020-1685 (Fed. Cir. Sept. 28, 2021)において、米連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、陪審員の故意侵害の判断を支持し、連邦地裁の追加損害賠償の裁定を復活させました。

この事件の一回目の控訴において、CAFCは、連邦地裁が故意侵害を認めなかった判決および追加の損害賠償の裁定を無効としました。再審理の結果、連邦地裁は、Ciscoの行為が「意図的、悪意のある、悪意に満ちた行動」(wanton, malicious, and bad-faith behavior)のレベルに達していないと判断し、故意侵害の陪審員の評決を取り消しました。また、故意の侵害ではないと判断した連邦地裁は、損害賠償額の増額を認めることを拒否。

2回目の控訴である本案件において、CAFCは、陪審員が下した故意侵害の判断に対して実質的な証拠が裏付けていると判断し、陪審員の評決を復活させました。その際、CAFCは、追加の損害賠償(enhanced damages)を正当化する行為と、より低い基準である故意侵害(willful infringement)との区別を明確にしました。

故意侵害には、「意図的な侵害ではないこと」(no more than deliberate or intentional infringement)が必要です。一方、追加の損害賠償enhanced damages)は、「意図的、悪意のある、悪意に満ちた行動」(wanton, malicious, and bad-faith behavior)に対してのみ適用されると、その違いを明確にしました。

また、CAFCは、連邦地裁が最初に下した追加の損害賠償の裁定を、故意侵害の評決が復活したことを考慮して適切なものとし、最初の裁定に裁量権の乱用はないと判断しました。

参考文献:Federal Circuit Clarifies That There Is Not a Heightened Standard for Willful Infringement

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

著作権
野口 剛史

ジェネレーティブAIを使ったコンテンツ制作の法的問題対策

ChatGPT、GitHub Co-Pilot、Midjourney、Stable Diffusion、Artbreeder、DALL-Eなどの生成型人工知能(AI)システムの利用は、新しい製品、サービス、ソフトウェアの開発、その他のコンテンツの作成にますます普及してきています。この技術を使用することによる潜在的なメリットは広範囲に及びますが、ジェネレーティブAIによって作成された知的財産(IP)の法的所有権は複雑で、使用する企業にとって所有権と保護の問題が発生する可能性があります。そこで今回は、ジェネレーティブAIが作成したコンテンツにおけるIPの所有権と保護性をめぐるいくつかの法的問題を探り、企業がこれらの問題を回避するための実践的な指針を解説します。

Read More »
訴訟
野口 剛史

アメリカ初の著作権小額訴訟法廷誕生間近

米国著作権局は、米国初の著作権小額訴訟法廷である「Copyright Claims Board (CCB)」を作り、そのウェブサイトを開設しました。CCBが実際に稼働するのは今年夏の予定ですが、それに先駆けて関連する情報を公式サイトで提供しはじめました。

Read More »
supreme-court
訴訟
野口 剛史

最高裁が仲裁を擁護する判決: Henry Schein, Inc. v. Archer & White Sales,Inc

今回のアメリカ最高裁の判決により、契約書の仲裁に関わる規約はより重要性を増していくことが考えられます。アメリカにおける訴訟は高額なので、契約の際に仲裁で係争を解決する条文を含むことがほとんどだと思いますが、その文言に注意しないと意図しない訴訟に巻き込まれてしまうことがあります。

Read More »