特許の場合、商業的実施形態が市場で成功したことを非自明性の証拠として提出することができます。いわゆるCommercial successというものですね。MPEP214. 意匠でも同じような主張ができるのですが、意匠の場合、機能的な部分は保護の対象外になるため、特許の場合と比較して、このCommercial successによる非自明性の証明がとても難しくなります。
Campbell Soup Co. v. Gamon Plus, Inc., Nos. 2020-2344, 2021-1019, 2021 U.S. App. LEXIS 24760 (Fed. Cir. Aug. 19, 2021).
Campbell Soup Company(以下、「Campbell」)とその関連会社は、Gamon Plus, Inc.(以下、「Gamon」)の縦型重力供給ディスペンサーに関する2つの意匠特許を侵害したとして訴えられました。Campbellは何年もの間、Gamon社の「iQ Maximizer」と呼ばれる製品を使用し、Campbellが市場で成功したのもこの製品の恩恵があったと明言していました。
しかし、Campbell社は重力式ディスペンサーのサプライヤーを変更したため、元の供給元であるGamon社は特許侵害で訴訟を起こします。これに対し、Campbell社は、2つの意匠権の再審査を申請します。
下図は、意匠の範囲に記載されたデザインと先行技術を比較したものです。特許審判部は、先行技術が請求の範囲に記載されたデザインと全体的な外観が同じであるにもかかわらず、非自明性を示す客観的な指標がそれを上回っていたため、Campbellは非特許性を証明できなかったと最終的に判断しました。
審査会の非自明性の判断では、クレームされたデザインの商業的な実施形態であるiQ Maximizerが大きな役割を担いました。iQ Maximizerと意匠でクレームされたデザインは「共存」(coextensive)しており、商業的な成功には意匠権でクレームされているデザインとの関連性の推定がされるため、意匠は非自明であると判断されました。
しかし、連邦巡回控訴裁(CAFC)は、審査会とは異なった事態の認識をします。「共存」(coextensive)であることは、商業的実施形態が全体として「開示されクレームされた発明である」ことを意味するものである。したがって、商業的な実施形態とクレームされたデザインとの間のあらゆる違いは、この「共存」(coextensive)であるか否かの判断にとって重要であるため、意匠でクレームされていない特徴は、「追加の重要でない特徴にすぎない」(nothing more than additional insignificant features)と考えることが重要だとしました。
CAFCが強調したように、意匠で請求されているもの(実線で示されている)と請求されていないもの(破線で示されている)とを示すと以下のようになります。
CAFCによると、審査会が、請求されていない特徴が 「装飾的なデザイン 」(ornamental design)にとって重要でないかどうかを分析したことは誤りであると指摘しています。
装飾性は、通常、意匠特許の分析の中心となります。しかし、意匠と特許を区別しない「共存」(coextensive)テストでは、「請求されていない特徴が『取るに足らないもの』であるかどうか」が問われます。
以上の図を見てもわかるように、クレームされた意匠の範囲は、製品全体のうち、ラベル部分、円筒状の物体、ストッパーなど、ごく一部です。後方のレール部分とサイド部分のはクレームの範囲外です。
正しい基準である、意匠でクレームされていない特徴は追加の重要でない特徴にすぎない(nothing more than additional insignificant features)という考え方を適用すると、商業的な実施形態であるiQ Maximizerと意匠でクレームされたデザイン(実線部分)の共通している部分がとても少ないため、CAFCは商業的な実施形態はクレームされたデザインと「共存」(coextensive)していないと判断しました。
この判決の中で、CAFCは、「共存」(coextensive)の基準を意匠に適用することの難しさを認識しています。意匠では重要な機能的特徴をクレームすることができないため、機能的な商業的実施形態と比較した場合、意匠には常にクレームされていない重要な特徴があります。そのため意匠において、商業的実施形態の市場での成功を元に意匠の非自明性を証明するのは難しくなるでしょう。
参考文献:Nonobviousness of Commercially Successful Designs: Mmm, Mmm, Not So Fast