クレームで範囲を指定する際、終点を含むのか含まないのか?

特許明細書の作成者は、出願書類や特許請求の中で、値の範囲を記述することがありますが、特許請求項に「XとYの間」と記載されている場合、それはXとYを含むのか、それとも、XとYを含まないのか?判例を見ながら明細書作成時の注意点を考えます。

値の範囲を記述するフレーズをどのように表現するかを決める際、多くの選択肢があります。例えば、”between X and Y”, “range of X to Y”, “from X to Y”, “up to Y “などは、値の範囲を記述する方法の一例です。一見単純な表現ですが、これらの表現は、クレームの範囲や特許性に大きな影響を与える可能性があります。

終点を含む範囲

CoorsTek, Inc. v. Reiber, 2011 U.S. Dist. LEXIS 47145 (D. Col. May 2, 2011) において、問題となったクレームフレーズは以下の通りです。

2. A tip as in claim 1, having a resistance in the range of 105to 1012ohms.

この範囲の分析において、裁判所は「終点が数字である場合(例えば、10までの数え方や、7人までの乗客の座席数など)は、通常、終点が計算に含まれる」と指摘しました。そのため、クレームされた範囲は、始点と終点の両方を含む、1×105ohmsと1×1012ohmsの間の値を有する範囲 と解釈されました。

終点を含まない範囲

しかし、クレームで範囲を指定する際、いつでも終点を含むように解釈されるわけではなく、中にはクレーム範囲には終点を含まないと解釈される場合もあります。上記と同じCoorsTekでは、以下のようなクレームフレーズが終点を含まないと解釈されました。

1. A tip having a dissipative material for use in wire bonding machines for connecting leads on integrated circuit bonding pads, wherein said dissipative material has a resistance low enough to prevent a discharge to a device being bonded and high enough to avoid current flow large enough to damage said device being bonded.

この範囲の終点は、数値による終点ではなく、接合されるデバイスへの放電を防ぐのに「十分低い」(low enough)抵抗を持つ放熱材料と、接合されるデバイスにダメージを与えるような電流を避けるのに「十分高い」(high enough) 抵抗を持つ放熱材料という、機能的な言葉で表現されていました。

この範囲が関数用語で表現された終点を含むかどうかを判断するにあたり、前置詞「~まで」の目的語が数字ではない場合、最も自然な意味は、その目的語を除外することである(例:壁をドアまで塗る)と理解。

問題となった範囲の終点は、機能的な用語で表現された非数値であったため、本件の連邦地裁は、終点を除外してもよいと結論づけました。そして、裁判所は、範囲の文脈において、散逸性の意味を分析し、本願の中で定義され使用されていた散逸性の意味を分析し、「散逸性とは、完全に絶縁性であることと完全に導電性であることの間の範囲の電気抵抗を有することを意味し、両方の端点を除く」と判断しました。

終点に関する論争を避けるために

特許出願の際に範囲を定義するために使用される「between」やその他のフレーズに、実務家が意味や文脈を与える機会は十分にあります。例えば、「between X and Y」や「between」という言葉も、終点を含むか含まないかで定義することができます。これは、別の定義、または範囲が定義された後のフォローアップの文の形で行うことができます。例えば、明細書に「a range between X and Y includes the endpoints X and Y (or excludes the endpoints X and Y were that desired)」と記載することができます。

同様に、範囲が示されている場合には、端点を明示的に含むまたは除外するようにクレームを書くこともできます。例えば、”from X to Y “という表現を使用します。あるいは、独立請求項が「between X and Y」という範囲を広く規定する一方で、従属請求項ではXまたはYを具体的に主張し、これらの従属請求項が独立請求項の範囲を不適切に広げないようにすることで、請求項の範囲を「伸縮」させ、範囲が終点を含むという本質的な証拠を提供することができる。

参考文献:Diverging Definitions: Is a Range Exclusive or Inclusive of the Endpoints?

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