CAFCが抗体組成物に関する特許を無効にしつつ方法に関する特許は有効と判断

2021年8月16日、米連邦巡回控訴裁判所(以下、CAFC)は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(以下、CGRP)を標的とした治療用抗体(therapeutic antibodies )に関するTeva社の特許について、2つの判決を下しました。いずれのケースにおいても、CAFCは、申立人であるEli Lillyが提出した当事者間レビュー(以下、「IPR」)に関する特許審判部(以下、「審査会」)の判断を支持しました。しかし、この2つの判決の結果は、特許権者であるTevaにとっては正反対のものであり、抗体に向けられたクレームは自明で無効とされましたが、これらの抗体を用いた治療方法に向けられたクレームは有効と判断されました。  

判例:Teva Pharmaceuticals International GmbH v. Eli Lilly & Co., Nos.2020-1747, 1748, 1750, (Fed. Cir. Aug. 16, 2021)

1. 抗体組成物に関するクレームは無効と判断

CAFCは、先行文献に抗CGRPモノクローナル抗体のFabフラグメントと全長の両方が動物実験で皮膚の血流をブロックすることが開示されていることから、ヒト化CGRP抗体3を対象としたクレームは自明であるとする審査会の意見に同意しました。

またCAFCは、Tevaが主張した潜在的な安全性の懸念は、LillyがCGRPアンタゴニストの実際の研究に依拠したことにより、それを上回るものであったとし、主張された安全性の懸念は、クレームされた発明に到達するための先行技術の教示の組み合わせを抑止したり、阻止したりするものではなかっただろう、という審査会の見解に同意しました。

さらにCAFCは、クレームされた発明を成功させるという合理的な期待があったであろうという審査会の見解に同意し、抗体組成物クレームの自明性を立証するためには、クレームされた抗体を病気や症状の治療に使用することに成功するという合理的な期待を示すことは必要ではないとしました。

最後に、CAFCは、Teva社がクレームと主張された副次的対価であるライセンス契約との間の関連性を立証できなかったとし、ライセンスの存在だけでは自明性の結論を覆すには不十分ではないとしました。

2. 方法クレームは有効

意見書では、Tevaの抗体組成物クレームに対する処分とは対照的に、CAFCは、抗CGRPアンタゴニスト抗体を用いて片頭痛関連の症状を治療する方法を指示したクレームは有効であるとする審査会の決定を支持しました。

Lillyが自明性の主張のために依拠した主要な先行技術は、低分子の非ペプチドCGRP受容体拮抗薬の片頭痛治療における有効性を証明する臨床試験データでした。しかし、CAFCは、片頭痛に関連する症状を治療するという特定の目的を述べたクレーム前文をクレームの限定とみなします。

裁判所は、引用文献の教示を組み合わせる動機があったというLillyの意見に同意したものの、低分子化合物がCGRP受容体をブロックする能力を持つという先行技術の開示は、抗CGRP抗体を投与して片頭痛関連の症状を治療することの成功を合理的に期待させるものではないという審査会の意見に同意。

CAFCは、先行技術文献は、全長の抗CGRP抗体が、in vivoで内因性CGRPの阻害を達成するために必要な免疫遮断の作用部位であるシナプス間隙に到達できることを示すデータを提供していないことを指摘。

最終的に、CAFCは、方法クレームの特許性を支持した審査会の決定を支持しました。

3.教訓

抗体組成物のクレームは使い勝手がいいので権利化したいものですが、このようなクレームの特許性に対するハードルは高いものとなっています。潜在的な利益を示す何らかの教示があり、抗原がよく知られている場合、挑戦者が文献を組み合わせて抗体を製造する動機を見つけることは比較的容易です。また、これらの抗体を作製することに合理的な成功の期待が持てると主張しても、それを妨げるものはほとんどありません。

しかし、対照的に、治療目的で抗体を使用して患者を治療することは、まだ予測不可能であると考えられているため、これらの抗体を使用した治療方法に向けられたクレームの有効性は認められやすい傾向にあります。

特許権者は、抗体関連発明の保護を得るためには、成功の可能性を最大限に高めるために、常に異なるタイプのクレームを含めるようにするべきでしょう。

抗体治療薬の出願においては、抗体組成物のクレームと治療方法のクレームの両方を含めることが非常に望ましいと言えます。また、抗体をクレームする場合、エピトープではなく構造で抗体を定義することで、非自明性やその他の特許性の要件に抵触しないようにすることができます。治療方法をクレームする場合、少なくとも一部のクレームに治療の目的を含めることを検討するべきでしょう。

一方、訴状提出者(異議申立人)は、リソースが限られている場合、抗体組成物クレームの無効化に注力すべきでしょう。また、先行技術の教示とクレームされた方法の類似性を評価して、いかなる訴訟戦略においても成功する合理的な見込みがあるかどうかを判断することが望ましいです。

参考文献:Federal Circuit Decides Teva-Lilly Spat for Antibody Compositions and Methods

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