競合他社を相手に特許訴訟を行う場合、自社の事業の根幹に関わるような重要な情報や書類を「Attorney’s Eyes Only」にすることがあります。今回の判例では、必ずしも営業秘密でない関連文章が「Attorney’s Eyes Only」に該当すると認められたので、どのような情報や書類が「Attorney’s Eyes Only」に該当するかを知るのに参考になります。
判例:All Plastic, Inc. v. Samdan LLC, Case No. 20-cv-01318-NYW (D. Col. Feb. 26, 2021)
Attorneys’ Eyes Onlyとは情報へのアクセス制限
Attorneys’ Eyes Onlyとは、訴訟において機密性の高さに応じて証拠へのアクセス権利を相手の社外弁護士に限定することを言います。アメリカの訴訟ではディスカバリーという当事者同士の証拠の開示が求められますが、自社の事業の根幹に関わるような情報など競合他社が知ると事業に大きな支障を及ぼすものについては、Attorneys’ Eyes Onlyという扱いにし、相手の外部弁護士しか見れないようにすることができます。
競合会社間の特許訴訟でAttorneys’ Eyes Onlyが問題に
今回紹介する判例では、原告が被告に対しディスカバリーにおける各種書類の提出とAttorneys’ Eyes Only (AEO) とされている資料の扱いの変更を求めた申立を行いました。原告は、「被告が指定した資料の多くはAEOとして適格ではない」という主張を裏付けるために、以下の3つの主張を提示します。
(1) 被告が AEO として指定した資料は、営業秘密に該当するほど機密性の高いものではない
(2) 被告の不当な AEO 指定によって、原告の弁護士はこの訴訟で被告から学んだ「重要な事実」を原告とほとんど共有することができていない。
(3) 被告はAEOとして指定する前に誠意を持って文書を検討する義務があり、原告はその確認のために個別に異議を唱える費用を負担するべきではない。
Attorneys’ Eyes Onlyに該当する書類は営業機密に限られない
しかし、連邦地裁は「”Confidential – Attorney’s Eyes Only “の定義も、Rule 26(c)とその解釈法も、AEOの指定を上記のように確立された企業秘密に限定することを義務付けるものではない」と述べ、原告の主張を退けます。
地裁は、「両当事者間の競争的な関係は議論の余地のないものであること、および本訴訟に反映されている相当量の不信感を考慮すると、被告が機密として維持されてきた顧客やサプライヤーの情報、請求書、販売情報など、直接の競合他社にビジネス上の優位性をもたらす可能性のある競合情報を、Attorneys’ Eyes Onlyとして指定することは適切である」と結論付けました。
結果として、問題になっていた書類の一部に関するAEOの指定は適切と判断されましたが、AEOとされた書類すべてに対するAEO指定が適切だったということにはなりませんでした。
Attorneys’ Eyes Onlyの指定は慎重にするべき
連邦地裁は、一般に公開されているすべての文書や、広告、ダイレクトマーケティング、投資家向けプレゼンテーションなどの書類のAEOに該当しないとし、該当資料の適切なアクセス範囲の指定を行い、編集・変更されていない資料の提出を求めました。
参考記事:”District Court Determines Attorney’s Eyes Only Designation Proper for Relevant Documents Even If They Do Not Constitute Trade Secrets” by Stanley M. Gibson. Jeffer Mangels Butler & Mitchell LLP